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3人が運転する行き先不明のリョ桜鈍行列車
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まよりです。
1年以上も止めててマジすみませんしばき倒してください(土下座)
今更ながらに更新してみる。
ホンットすいません…。



+ + + + + + + + + +
 


「とりあえずね、リョーマ君。君、今学期、数学係ね」
「……は?」

朝練の後、教室に入って机に鞄を置くなり、カチローがリョーマの席まで来て宣言した。
あまりに突拍子のない言葉に、リョーマは思い切り怪訝そうな声をあげるしかできない。

「あれ、聞こえなかった?だからね。リョーマ君は、この後のHRで決める予定の係決めで、数学係に立候補するんだよ」

まるで小さい子に言い聞かせるような口調で、カチローが優しく繰り返す。
そしてその後に、「それで、当然その係を勝ち取るの」と笑顔で言い切った。
「立候補してね」という頼みではなく、提案ですらなく、それは最早断定であり、決定事項だった。

「…………俺、係やるなんて言ってないんだけど」

そんな面倒くさいこと、頼まれたってやりたくない。
リョーマは、今年もあわよくば委員会・係などの全てに無所属で通すつもりだった。
仮に──万が一、仮に何かやらなければならないことになったとしたら、最悪、馴染みのある図書委員。
週一で部活に遅刻する、という点は甚だ許容しがたいものがあるが、それさえ目を瞑れば、勝手知ったる何とやら。
仕事は適当に片付けるか誰かに任せるかしてしまって、あとはひたすら寝ていればいい。
毎日、部活と家でテニス三昧な身としては、休息時間はいくらあっても多すぎるということはない。
それに──。

(……もしかしたら、アイツが来るかもしんないし)

リョーマが今まで何度か図書委員になってしまったとき、桜乃はいつも、リョーマが当番のときによく図書室へと足を運んでくれた。
元から本は好きだったらしく、毎回色々な種類の本を借りていった。

『リョーマ君。今日は、この本お願いします』

そう言って、リョーマの元へと本を持ってくるのだ。
そして、貸し出し作業をしながら、他愛もない話をする。
図書室だから、小声で、囁き合うように。
静かな図書室の中で紡がれる桜乃の声は、心地よく、耳に滑り込んでくるようで。
こんな何気ない時間が、リョーマはこっそりと好きだった。

──なのに、何故。

「数学係なんて面倒なコト…。俺、やらな」
「やらない、なんて言わないよね?リョーマ君」

皆まで言わせず、カチローが笑顔で駄目押しをする。
口調は柔らかいのに、笑顔もとても優しげなのに、この有無を言わせぬ威圧感は何なのだろう。
本当に、見事に某先輩の素質を受け継いでくれている。
ちっともありがたくないことに。

「………やらな」
「やるよね。リョーマ君。断るなんて、まさかだよね。友達で副部長で今年もクラスメイトな僕が頼んでるんだから」

お前のこれは頼みじゃなくて脅しだろ。
喉元まで出かかった言葉を飲み込むと、胸に重く落ちてきた。
傲岸不遜、恐れ知らずが身上のリョーマでも、この三年間で、それなりに学ぶこともあった。
触らぬ神に崇りなし。
触らぬカチローに災厄なしだ。


けれど、やはり数学係なんて面倒なことはやりたくない。
三度、断りの言葉を口にし──

「やら」
「ああ、よかった。やるんだね、リョーマ君。そうだよね、せっかく僕と小坂田さんがリョーマ君のために計画立てたんだもの」

今度は、三文字目まですら言わせてもらえなかった。
しかも、話が勝手に進んでいる。
さり気なく自分と朋香の名前を挙げ、「僕らに逆らったらどうなるか分かるよね?」と無言の圧力をかけてくるあたり、本当にいい性格に育ったものだ。

「……俺は時々、お前が青学のテニス部に入部したのが、お前の人生最大の間違いだったんじゃないかと思えるよ……」

正確には、そこで某先輩に出会ったことが、だが。
若干遠い目をして呟いたリョーマに、カチローは相変わらずの笑顔を向けてきた。

「何言ってるのさ、リョーマ君。僕は、青学の男子テニス部に入って、本当によかったと思ってるよ?」

実感のこもった言葉に、リョーマは「そりゃ、お前は楽しいだろうよ」と胸の内でしみじみとこぼした。



+ + + + +



「……で?何で数学係なワケ?」

最早、逆らっても無駄と悟ったのだろう。
リョーマは、とにかく話を聞いてみることにした。
机に片手で頬杖をついた格好のリョーマに、カチローが少しだけ胸を張った。

「そう、それだよ、リョーマ君。まったく、感謝してよね。僕も小坂田さんも、友達思いでよかったね」
「………………ハイハイ。ツッコミたいことは色々あるけど、まあそれは置いといて。話進めてくれる?」

半眼で低く呟いたリョーマの前で、カチローが携帯を取り出した。
それを何やらカチカチいじりながら、説明を始める。

「小坂田さんと色々打ち合わせしたんだけどね。ウチのクラスの水曜日の4限て、数学でしょ?」
「へえ。そうなんだ」
「……うん、きっと時間割なんて見てないだろうなと思ったよ。そうなんです。でね、小坂田さんの12組は、水曜日の5限が数学なんだって」
「ふーん」

はっきり言ってしまえば、自分のクラスの時間割も他のクラスの時間割も心底どうでもいいので、リョーマは半ば右から左へ聞き流し状態だ。
とことん興味のなさそうなリョーマをちらり、と見遣って、カチローはそこで意味深に一呼吸置く。
そして、おもむろに一言。

「ウチのクラスと小坂田さんのクラス、数学の担当教員同じなんだよねー」

全く無関心だったリョーマの身体が、ぴくり、と反応したのを、カチローは勿論見逃さなかった。
畳み掛けるように、言葉を重ねていく。

「同じ先生ってことは、進行具合もほぼ同じだろうね。ってことは、使う教材も同じ。知ってるとは思うけど、数学で使う黒板用の定規やら図形の模型やら、運ぶのは数学係の役目なんだよね」
「………………」

黙ったままだが、リョーマが全身の注意をこちらに集中させているのが分かる。

「4限と5限…。間には昼休みを挟んでるけど、まあ十中八九、先生は12組に教材を運んでおくように数学係に頼むだろうね。…とすると、あれ?数学係、お昼休みに堂々と12組に行ける用事ができちゃうねえ。しかも、毎週」
「…………カチロー…………」

ひくり、と口元を引き攣らせながらぎぎぎ、とこちらに顔を向けたリョーマに、とどめとばかりに、にっこりと微笑む。

「やるでしょ?リョーマ君」
「…………やらせてイタダキマス…………」

かくて、越前リョーマは見事敵の術中に陥落した。

                                                    Next  4th  step...



ははっ…。
こんだけ書いてほとんど話進んでないってどうなのか…orz
1年止めといてこれですか。
すんません、ぐーたん後よろしく…!
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プロフィール
HN:
るりまよぐー
性別:
女性
職業:
リョ桜を愛でること
趣味:
リョ桜
自己紹介:
リョ桜が好き過ぎる3人の3人の為のリョ桜。
終着点が見えないままリレー小説進めます。
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